のち祝福を
まくろく胡散臭いツヤのある回帰線を簡単に引いて
たびたび返されたトランプの屍体。そのどれもが
押し開いて咲きだしたクソロイド曲線の杜、いとまごと
沈静化して。背の躱しさが緩く 限られた最短を
逝くためのループに魅せられる 酔って垂直へ
変えて演じている。喧しき帽子のプリムに透き通る
葵の風 増大する
/地上の影
、口に含む明り
/慈悲の葉隠
純白の蜃気楼を無限に徘徊する乱気流の卍。至福には
スカーフを敷きそこに倣って、脆弱な獣達の回転する運命
狭く窮屈なバスケットから浮かべるはノスタルジイ
ぽつぽつと散華/純白を筆で涜していのちと焚く
ピリオドの壊走/水路を逝く溜めの、鬼哭啾々
水を獲たベタな番 赤と青の天壌
近く纏まらず遠く締らず のち祝福を
湑む
まるで横顔の女だ 睫毛の長い、髪の黒い若い女が真直に背を凭れ眠っているのだろうか/一瞬通り過ぎた車窓に、何を隠そうとして、いま、不意に見せたのだろう
/これによって古く細い町並みは直線を辿り 私は、ここに降り立ったのだと思っている/その上、もうすぐに夕闇が帰ってくる/灯りがポツポツと路面を濡めらすと、知っていて
浅黒い手に抱かれるしろいかたまりが、意外なほど こちらを覗いている。獣じみた髪をもち、まるで対価のように 地ベタに寝そべる 隠花植物と受け止める /ペルソナを棄て、夜の闇に紛れ込む
聖杯に値し 沢山のパラソルが吊られている、モノクロの夢だ 雨の遊園地に置き忘れた、手と足を探しては供える その形態が鮮明に伝染り出す/僅かな洪水 紅殻の香華など 使われてはおらず【湑む】
pupa
不可解に捻れた獣道を作り出した、薔薇線の手招き
青々とした雜葬の絨毯を噛みしめ、これら花瓶のお囃子
夢見るピエロだ
裸足の花園だ
中空廃園だ
ぼぉたちの綿毛ら 黄昏時の川の流れに。
フラッシュを強く焚く水辺が、暮れ泥みが、
ぼおとして何も求めない
くぐってしまった 如雨露を持つ少女の、
さきにあった、キュピズムの庭。
レイヤーの一つにはキッシュプレートを、あちらさまに
燃えカスのページには、smile for me
(陰鬱ナ)カレは、わたしを、寝そべらせるも
(客室の)カノジョは、うつむきかげんで腹をむき出しだ
非日常的な景色のなかに、
身をおいて幾年になるだろう
はしたない、
四足歩行の、
否定的で
曖昧な境界線は 特別も侮蔑もない
照らし出す夕日の、
やわらぎの部位を
満ち欠けを忘れた 花には八重歯で。
たた佇むは、春の線画
ひいては、さらに鮮やかに託つける
灰色のひかりが蝕んだ胚に 我儘に紋白蝶を抱かせる
沖にはホカゲがあんなにも 微睡んでいるというのだ
未詳。
その澄んだ表面は世界は 翠の侵蝕 または神域/一冊を綴じた、現実から外れていく そのものが/解いたセーターよりあおぞら、扉が閉まり身だけを残してフルーツパフェより魅力的でなければいけない。
(廃工場に差し込む明かり)/早回しのGIF どうでも、それがなにかと言わさず、誣いて。/乗車した通勤バスは光を浴びてからっぽだった 空調の効いた座席に先客は一人もおらず錆びついた香りが曼荼羅になる/きっと月光、運転手すら姿を隠していた
/失わない命より古びた洋館の灯りが恋しい。わたしのはなしはゆめまぼろしでもよかった、/大事なものから解いて閉まい、ばらして閉まったの。遠方の側へ投げかける、おはようアンティークな終末思考
思い足掻いた世界でもなんでも。雷より黒蜥蜴、心が おもいださせる どんな宝石でも作り出せるすこしのすきま。ちょっとのあいまで立ち止まった今 この場所には、まよいごと、ひとり 駆け足で霞ませている
殺さねばならない ロフト上からどこまでも張りぼての、未詳。
焦点を合わせる
妍しいだけの皿に、その手のひらに 泳ぎ回る琉金の ちいさく軋んだベビーベッドから、流れ星を拾い上げる/ 海にいる /岸辺から眺めるひとがいて、遠くにある帆船と征く 庭園には野草が、死期を無視して、飛び回る瞳のまま 背には山々、眼下には子猫が眠りについている 蛇のような、枝ばかり、天を庇うような木漏れ日の中だ。
贋作の宝石でも、易いものだと、括り付けて 廃墟を駆け抜ける式祭の、行方を追っていたのだったか いまのびのびと生い茂る。日傘のおんなが、いるだろうが 写真ではわからない横顔を指でなぞっても、うたえない メリーゴーランドはもう錆びついたままの 宇宙船にのって、なにごともない、花壇をみとっている_処。
四方山話
もとからどこにも取り付いてなかった象嵌の螺子ですから 其の内ルリタテハの瞳は羽化していくのを 襤褸が出た躰で憶えている 深層で春を装う球体関節人形の御伽噺
ばっかみたいだって、靴飛ばして歩けないやって、甘えたりしてそうやって肩並べて 小突きあえたらいいでしょう
甘い雲/苦い雨 層状の烈 群青の愚鈍 まったくの晴開、碧く拓けた瞳に、なにが映るのか 真相はどこにあるのか。待ちぼうけ、それとも 置いてきぼり、道端の坂道に立ち尽くすこと。
この出入口を閉ざした茶事チャゴトの残影が雪見酒にも想えています。工房に続くスロープが音楽堂から渦をまき 過去を引きずりながら 消せない惰性を余香にいたしました。寄せ返す感覚にとらわれると ちょうどつま先だけを濡らしており 洪水が吹き零れたのは零時の 余剰の つめあとときでした
とある木の葉の一枚が ぐるぐるとまわっているのを、しにたいとか いきたいとか、そういった頑丈な感情がひたひたにある、ティーポットに 入れたはずのない思いでも 沸き出せばいいのに、出がらしの紅茶の香りだけをのこしてやはりこの胸に眠りこんでは しまってあるのです
記憶を呼び起こしても見ず知らずの祈りだけ置いて。
道だと思ったものが翳で、
囁きだと思ったら号令で、
残酷だと思ったら食卓だった、
ほら 自らの姿と 己の瞳で 然とご覧なさいよ
ギザ歯、曲がった鼻、ボサボサの眉、可愛た瞳、長い耳、ミンククジラの卦皮、間柄から。指の愛だから、指し示した砂の上で。海の藻屑のうたが、私達の関係を湿している、まだあたたかい12月のカレンダーの色あせたこと。
もうすこしだけ藤を吸う風が――「冷たいかな、」(いまでも。)「そうだな、」
回廊を曲がる少し手前に、さつきが咲き誇っていたのです。桜の葉がざわざわと 髪をはたいていきました。生まれたばかりの蜘蛛の巣を払い除け そのくせ ちいさな雲が沸き立つのを それとなく もじったりしてね。
この錠前の閂はもとから緩んでいたと聞きました この鍵穴はなにかが巣食っていたところです
ではヘアピンで拗られた穴のそこは いやに癖のある花のなかは 〈夢の 或る 星界が〉 こうして 押し開かれているという、夜な夜な 四方山話だ
溺る鱗/随時
果てまで続く、対照にカラフルな一軒家が能面つらなし、さっそうと立ち並んでいる。
(おい新入り、馴染んでんじゃねえぞ、ぼさっとしてねえで、かしこみもうしやがれ)
緊張が裾に解ける、その反物で何を作ろうか、螺旋の妖精が魔法をかけたよう、
路地裏の瓶コークになにかの稚魚が混入しだしたようだ。
(ここにそこに思いがけなくこれ幸いと)
おしゃれな街の、それは多分そうで見放してみては、たわいないライトのさじ加減が、
だだ、とせせこましくぶら下がっている夜さりであります。
霧もなくただフィルムは古く咳き込み慌ただしく貧しい桃色が足早に去っていきました。
あわれめのあわさりは、丈が足りず、ひどく寒そうな柔肌を覆うだけです。
そうか 毛糸の山だ。
毛糸の山だ そうだ、
始末のついた拗れたものが、秋の様な生々しい葉を着せている、
一斉の美だ、その寂寥をなぞってしまわれる、幾つもの稜線だ
見ている、わたしを
わたしが 見ている。
何も知らずに何も語らずとも、わたいらの口は足跡を詠んでいる、
人前で口吻を躱し、平らに燃え広がる、策は手ぬるい笑顔を窺いながら
心象という自身の境界線の揺らぎを捉えて超えたい 今更
振り返ったところで遅いんだよそれは 胸を張って誇らしげにお高くとまる
終末近くにある、蛍火を吸って吐く 認識という覚醒に羽化されるように、したり顔だ
inori併せたような肉房のその補足、垂れやがるその熱の、
薄闇の窓辺より瓦解する、世界の上辺が、まだ囀るまえに。
白く照らされる壁一面に、緑化したアオが栄えるように、見えざるが。
コヨリ散らしたばかりの紙幣のそれ冒涜、雨だれるその空ろ、明星の畠より燦燦触フる。
ときの残片が、しかし頷くだけに。しらけていった緞帳の餞別に、
探花した赤が焦がすが、くさ深き地に、命が濛々と行く手には、まだ、まだだ。
糸屑
蝶葬。飛翔ヒカける。それを、ひとのあるかたちに群がる 肉食の翅が蠢く 気配と憶え、群がる空中に 乱舞する鱗粉を酸う。追うように縋るように うしろに這えてくる、この背 その胸 どの躰も。土壌から膿まれ射る姿に呼ばれ そのものはかつての記憶と招かれるばかりで、何処にも征けやしない。小さな澱を睨んでおいて 汚れた瞳は潤んで 覗くわずかな疵。
これを陽炎、と結ユう。
首の切れた麒麟が見えて、ゆっくりと通り過ぎる、葦でなければ浮腫んだ猫の面の暗示を閃かせる、近づけば三叉の鬱金香。齧ってはすこし、赫。偲び。親指ほどの膵臓を引っ掛け、慌ただしいものだ。なだらかに腫れ上がる空に接ぎ銜えた、野天と明かり。あるだけ、模範的浄瑠璃の流れを理想図に捩じ込み、ひとり陽春を束ね競い合わせるとする。かの草葺の、かこいような慶弔は、素焼きの礎を用い沁みる頃の糸屑と布に、いのちかぎりのこの手が、のぅのぅと拭うのだ。
短く切り揃えた、なにか似たようなところが、ほぼ、たのしそうに失敗を重ねている。いんちきの背くらべ、おもちゃのコピー品、レプリカの盗作、どれもこれも幸運に肖ります。
高尚なフィギュアより貴いクローバーは、そこら中に、みだらに、鋳るのでしょう。だれが申しましたか、糞知りませんが。負け犬の遠吠えだけが時報のように、看取られていきます。
無口な星に宥められる今、西の空に飛行機の翳が堕ちる。モノクロの砂漠の文様が、点滅する電光に炙り出される。道を塞ぐばかりの枝を伸ばした桜が、〈その/いったい/そのどこか〉花弁もざっと消え去る、瞬間、今も未だに じとついた。鏡は雫、大人びた子供が黄色い傘をまわす 廻し続けている、あなたはその耳を食い千切り口を縫い合わせ瞼も焼いて、残るは舐り満たした嗅覚だけの、わたしのドッペルゲンガー、負け犬かしらね。
星は見えない
みゅーじかるないと
森林に水と魚が浮いている。たくさんの煌きを生み出しながら華麗にもこの手から逃げ出していた、暫くして。吸い殻を弄くりながら、溜まり込んでいたものを拾い集めては踏み潰す、燻ぶったぶんだけいっぱいに思えた。腐るほどの穢れが依然として船酔いのようにいつまでも、大地を揺らめかせる病のよう歪ませて魅せているのだから、仕方がないが、そんな日もあるということ。
久世 要は不機嫌である。びんと跳ね起きたあとで眼下に開けた美景が気まぐれにも日暮れであったとして大したことではなかったけれど。重いしがらみを纏わせるような漆黒があたりを覆っていくのだが、それもまた引け際の哀歌のように思え。ですから闇雲に祓おう、そして悲劇的な結末としてのマテリアルのひとつとして、丁寧に塗り込まれる記憶の秘訣をこうして、彼の歎息と漏らしているのだ。
無遠慮な欠伸をかます男がいた。不快な透明感に投影された自らの寂寥感を泥沼の藍色、波間に流したばかりである。笛の音めいたフェリーが遠くに着岸し、闇の底へいくつかの灯りが放たれる。つきのない夜こそ星星が耀き、夢や希望を募らせ膨らみ過ぎた野心が風にのり、にわかに、わらいごえに沈着する、凍えた魂に少しばかり残された、蛍火がまた啜り泣き、そのような波音がざわめきが銃声が手拍子でかき消される。
ああ、目映いほど陽気な音色が触フってくる、心などとうに壊れているのに、器などとうに廃れているのに、多国籍雑感が入り乱れた、その小さなハコ(Radio)から汚れた横文字が流行歌と疾走らせる。いつぞやの記憶を垣間見せ、翻される濁声に酔いつぶれてしまう。楽譜はなく記憶も薄れ、何もかも亡くしたはず。だのに、受け継がれているのか、どこかだれかの胸のうちに、熱を生み出すのだろう。あゝ、逃れられやしない、愛おしくも狂おしい、魂のものがたりから。
春の雨
昨日まで少し汗ばむような天気で、桜のつぼみも随分と膨らみ、全身で春を感じていたというのに。雨が、雨が降り続いている。外に出る気にもなれずに窓辺からしずくが滴るのを感じていた。庭の隅に植えられた桜の木は子の誕生を祝って植えたもので、ここ数年でやっとたくさんの花を見せるようになった。けれどなぜだろうかやはり狭い庭の隅に、からだをまげながら陽の光を求め両手を広げる桜の木に、いくらか申し訳無さも感じてしまうのだ。今沢山の蕾を抱いて雨に濡れる桜も、あと数日もすれば咲き始める。そして去年と同じようにきれいに微笑んだまま首ごと落としてしまうものの、そりゃあ多いことよ。この狭い庭で植えられているからなのかと調べてみたところ、どうやら鳥たちの仕業のようで『盗蜜』という、花ごと食いちぎって密を吸っては捨て去る現象のようだった。たしかに我家の庭には毎年鳥が巣を作っている。ああそれで、と納得がいったのだが、それでもきれいに咲いた花たちが、駐車場を覆うようにあるのは、まるで魔物のせいとでも、いいたくなる、心底ゾッとするもので。ただそれほどの花を散らしたとしても天を仰げばまだまだたくさんの花を咲かせているのだから、鳥たちもまた歓び囀るだけ、来年も現れることだろうとすっかり信じきる、しょうもない、わたしが。まだ何事もない雨がしとしと降り続く、庭を眺めながら呑気にも茶を啜る、今年も来年も、その次の年も、きっと疑うことなく生きてしまうこの不思議さをふと思い返すように。未だ雨が、雨が降り止まぬ。