ことばとき(araireika)

捻り捩じった羅列・流れの一音にどれだけの意味が混められるか

湑む

まるで横顔の女だ 睫毛の長い、髪の黒い若い女が真直に背を凭れ眠っているのだろうか/一瞬通り過ぎた車窓に、何を隠そうとして、いま、不意に見せたのだろう

/これによって古く細い町並みは直線を辿り 私は、ここに降り立ったのだと思っている/その上、もうすぐに夕闇が帰ってくる/灯りがポツポツと路面を濡めらすと、知っていて

浅黒い手に抱かれるしろいかたまりが、意外なほど こちらを覗いている。獣じみた髪をもち、まるで対価のように 地ベタに寝そべる 隠花植物と受け止める /ペルソナを棄て、夜の闇に紛れ込む 

聖杯に値し 沢山のパラソルが吊られている、モノクロの夢だ 雨の遊園地に置き忘れた、手と足を探しては供える その形態が鮮明に伝染り出す/僅かな洪水 紅殻の香華など 使われてはおらず【湑む】