ことばとき(araireika)

捻り捩じった羅列・流れの一音にどれだけの意味が混められるか

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

みゅーじかるないと

森林に水と魚が浮いている。たくさんの煌きを生み出しながら華麗にもこの手から逃げ出していた、暫くして。吸い殻を弄くりながら、溜まり込んでいたものを拾い集めては踏み潰す、燻ぶったぶんだけいっぱいに思えた。腐るほどの穢れが依然として船酔いのよう…

春の雨

昨日まで少し汗ばむような天気で、桜のつぼみも随分と膨らみ、全身で春を感じていたというのに。雨が、雨が降り続いている。外に出る気にもなれずに窓辺からしずくが滴るのを感じていた。庭の隅に植えられた桜の木は子の誕生を祝って植えたもので、ここ数年…

花筏に啼かされて

甘い花を散らすように、くちづけを、なめらかに頬張る指を止めないで。蝶蝶、唄うように甘やかした、ひらひらと舞い散るばかりの花ひら。流れ去るばかりの花筏に熨せられても、目眩のような残光が網膜を焼くほどの、桃色の視界に染まりきっても。多分、毎年…

疎隔した生き物 モノノアハレ

エンジンをかけ今日に乗り込んでいく。表情筋を圧え、酸方向から成る光明をひとつづつ引き剥がし片付けていく。そして今今。作業効率は右から左へ乗せられるだけ満ち欠けだらけの罅を修復するよう、ちいさく折りたたまれ、すこしだけ軽く準える、「この便り…

アイボリーの椅子

やっぱり微笑っている、ヒト。 肩が震えたあとで/羽根が生え落ちたときに/ここに滑り込んだのだと。 閉苑間近の映画館の待合室のゆったりとしたソファーで(今震えている。) 冷ややかな水族館で/賑やかなネットスーパーで。黙って。私を私として、 受け…

靴擦れのせい

手荷物をおろしてしまえばいいのに、背負った分だけいくらかヒトらしく思えてくる。 校舎の隅っこにある、寂れた消火器の気分でいたい。喧騒を逃れた隅っこの雑草は根強く踏まれても生えてくる。 折り紙一枚の価値、箔押し一栞の美しさ。いまなにを取り出し…

錆びた針金と緑青の浮いた貨幣とを交配した、はらばいの。まだわかい蕾と水仙の足がない。解けやしない知恵の輪の/いっそ/解毒作用を知りませんよ。触れずしてまやかしだと 悪戯だと、眩しくて言いようのない順序を 憶測もなく 泥沼に丸め込んだ一音を保護…

揺籃(緒/粋/端)

暗幕を持たない不知火が、それにしてもと続く、まごついた泡が駄目になるのを ほらみたことかと反転する。真相を失くしたものはもともと幾何学を閃光させ、それでも大きく唸ることはない、胸の内に飼われるハイエナが聖獣と戯れては、焚き付ける塵や埃に眩し…

〈うぞめき、ろまん〉

齢の股から屍の如く、白腕がごっそり生えてきたサンダルウッドの景勝が見事であった。反社な殻と、勿体ぶって、豪壮の槍を/万華鏡の恵慈に突き立てる。横暴よ。確してみれば、稀有にぞんざいの、戯言の細部を圧縮する。毘藍婆よ。制は尾となり豪は僅か、人…

あわい

花の名前を忘れてしまったのです。多分花だと思うのです。けれどトランプのカードを切りました。そして裏にかえして、表からそれを眺めています。コーヒーは一口、躰を、あたためましたか。ブランデーは上澄みに注ぎ込まれ、冷たい生々しい感覚が命を刻んで…

ぼくがぼくでなくなるとき、ボクはボクをたべているとき(原文留置)

ぼくがぼくであるには、ボクを俯瞰するなにかが、それがボクをかたちにするために必要な何かを持っている、ボクは丈夫な器と丈夫な心を持つ、けれどボクは誰にも見えやしない、聞こえやしない、ボクの足が大地を捕らえている、欠陥のない両腕はするりと動か…

シガレットココア

女々しいな、むっとした香りを嗅ぐ抑揚のない背後からの視線、いつになく。わっとおもわず声もあげない空模様、病かな、歴史かな、空席に鬱憤が溜まっている。手がこんでいる、ひたむきに、汚らしい口を覆う、だまって放っておいて。退屈しのぎにはなしかけ…

浄罪

終わりを嘆いた。漂着した小さなひとみだ。ちいさく震えたけれど背負い切れるわけでもない、砂の器だ。幾多の山々を越えた少しの荷物が、更フけ、少しずつ輝きを喪っていく。零れていたのだと気付いたときには遅く、火は消えようとしてた。 片足、細腕、碧眼…

冠水

小枝をたたむ、河原になって。氷が覆う心臓の周りを、何周でも血が循環する。もうすぐにみらいと手にかけるのに、億劫にも見送るような真似を施された、にごりのおとよ。キミではないな。足を投げ出して/ただ酔わせて あわさった影が隠される。 あのてこの…

この夜行列車のラヂヲ放送は今夜も。「鈴のように転がる姿を見たことはなかったが…』からはじまり。軽快なステップを踏み越えて、明日の天気や今日あった事件、地方におけるほのぼの動物の生誕を、そういった心情のこもったアナウンスが、遠からず近からず距…

みずのいろ、あなたは

雨/風/星/海/落下地点に塒を巻く竜がいる。微動だにしないが、規則正しい鼾が対流を盛んにしていた。渦の中心に耀くその命の先行きが、正しい姿を齎していたのだと、後に語られるかどうかは定かではない。 これは私の見た陳腐なゆめの一部を、寝ぼけなが…

だれもいねえのよ

愛恋夢希望素晴らしい未来? うるせえよ。まったくキラキラしたもんぶら下げやがって、そりゃ幾らになるんだ。何日分の飯になるんか? ああー、どうせ赤の他人、てめえに恨み辛みもねえし、どうでもいいけどな、そりゃ俺のものがたりじゃねえからせいぜい幸…

標本箱

方眼の付いた画用紙で沢山の立方体を作り、自分の箱庭になる街を想像している。そこでもきっと今と同じように墨染の空を眺め、ゆめうつつが耳元で愛をささやくゴゴイチの授業はとても面白くもないのだろう。プラチナを胸に刺す決まりきった電子人形は流暢な…

僕等は星になれなかった

海峡から脱出したときに、星や山やツチクレたちが今日を求めて乱痴気騒ぎを熾していたことは、記憶に新しいと思う。零時を告げる新聞がガタついた扉の隙間から投函される時期、年四回ある会合で、仲違いした憶えがあった。ぐつぐつと泡を吹き出すビーカーか…